■台風8号水害、馬英九政権が信望を落とす
8月8日に台湾南部を襲った台風8号は、死者675人、行方不明24人を出す大きな被害をもたらした。中でも高雄県甲仙郷小林村は土石流で456人の命が奪われ、台湾中に衝撃を与えた。
この災害は、馬英九政権に政治的な危機をもたらした。災害後の政府の対応が遅く、また閣僚が不適切な言動を繰り返したため、馬英九政権の支持率が急速に低下した。批判が集中した劉兆玄・行政院長は辞任に追い込まれ、呉敦義・国民党秘書長が行政院長を引き継いだ。
■県・市長選挙、「国民党敗北」の判定
12月9日に投票が行われた県・市長選挙は17県・市で争われ、与党・国民党は前回の14から2つ減らして12ポスト、最大野党・民進党は1つ増やして4ポストとなった。
国民党が勝利した県・市が圧倒的に多かったものの、得票率は国民党が47.88%(前回は国民党系52.18%)に対し、民進党は45.32%(前回は39.50%)と急接近した。このため、この選挙は国民党の敗北と受け止められた。
2008年の総統選挙で政権を失い、さらに陳水扁・前総統の汚職事件で大きな打撃を受けていた民進党にとって、党勢回復の契機となった。
■陳水扁・前総統の汚職事件、無期懲役の一審有罪
汚職で身柄を拘束されている陳水扁・前総統に対して9月、台北地裁は無期懲役の一審判決を言い渡した。妻の呉淑珍・被告も無期懲役。長男の陳致中・被告は懲役2年6カ月、その妻の黄睿靚・被告は懲役1年8カ月。一家の罰金は合わせて8億元に上るものとなった。
■台湾・中国窓口団体トップ会談、次回はECFA調印へ
台湾・中国の窓口団体トップ会談が4月に中国・南京市、12月に台湾・台中市の2回、開催された。
その結果として、8月31日から台湾・中国間の直行便が、従来のチャーター便から定期便化され、便数も毎週108便から270便へと大幅に増加した。
今年(2010年)4、5月に開催される予定の次回会談では、ECFA(両岸経済協議)への調印が予定されている。ただし、ECFAについては野党・民進党などが反対しており、中国との協議は住民投票を通すよう主張している。
■中国資本の投資解禁、相次ぐ中国からの調達団
7月から中国資本の台湾投資が192項目について解禁された。そのうち製造業64項目、サービス業117項目、公共建設11項目。台湾と中国との経済関係はますます緊密化した。
これまで台湾資本による中国投資は長年続けられてきたが、台湾側は中国資本による投資を認めていなかった。この解禁によって今後、投資が台湾と中国との間で、双方向で行われることになった。
また、対中国経済関係の規制緩和を受けて、中国からの大型調達団が相次いで台湾を訪問し、大型の調達契約に調印した。
■斎藤・台湾駐在代表の「台湾地位未定論」で波紋
日本・交流協会台北事務所の斎藤正樹・所長が5月、講演で「台湾地位未定論」を主張し、馬英九政権からボイコットを受けた。この間、斎藤所長は台湾当局の上層部と面会できず、結局、12月には辞任することになった。馬英九政権は2009年を台日パートナーシップ促進年と位置付けていたが、この事件は対日関係の進展に大きなマイナスとなった。
「台湾地位未定論」は、台湾では独立派が理論的な根拠としているもので、日本は台湾の主権を放棄する際、中国に譲渡したわけではないとする主張。台湾は「中華民国」に返還されたとする国民党の馬英九政権の歴史解釈とは真っ向から対立する。
■アメリカ産牛肉の輸入規制緩和、反対運動起きる
馬英九政権は11月、アメリカとの協議に基づいてアメリカ産牛肉の輸入規制を緩和した。対象は骨付き肉、ミンチ、内臓など。狂牛病(=牛海綿状脳症、BSE)の懸念から輸入が禁止されていたものだけに、輸入解禁には世論の大きな反発が起きた。特にミンチと内臓について反発が大きかった。
この問題では、消費者や野党ばかりでなく、与党・国民党内部からも反対の声が起き、馬英九政権の支持率をさらに低下させることになった。
■台北捷運(MRT)内湖線が開通、トラブル頻発
台北捷運(MRT)内湖線が7月に期待を受けて開通した。しかし開通後、長時間の運行ストップなどトラブルが頻発し、利用者の不満を招いた。木柵線で使用されていたマトラ社のシステムと、それに新たに接続された内湖線のボンバルディアのシステムの不一致がコンピュータシステムに影響を与えたとされる。
内湖線の建設は馬英九総統が台北市長時代に策定したもので、馬英九総統に対する評価にも影響を与えた。
■景気低迷で無給休暇実施、経済成長はマイナスに
2008年後半からの景気低迷で失業率が上昇し、企業は相次いで無給休暇を実施して難関克服のためのコスト削減に努めた。8月の失業率は6.13%に上昇。第1四半期の経済成長率はマイナス9.06%と、過去最悪を記録した。実質平均賃金は13年前の水準に後退した。
■景気刺激策で「消費券」配布、一律1人3600元
景気刺激策として馬英九政権は「消費券」を配布した。一律1人3600元。紙幣と同様に使用できるというもの。総額は約860億元。大部分の人が受領し、人気を集めた。業者は消費券を使用した場合に割引や優待を提供するなど、消費の呼び込みに努めた。消費促進に一定の効果を上げたが、効果は一過性だったと考えられている。
■液晶、DRAMで業界再統合の動き、景気低迷を受けて
景気低迷を経て、台湾の基幹産業として挙げられる液晶パネル、半導体DRAMで業界再統合の動きが起きた。
そのうち液晶パネルでは、奇美電子(ChiMei Optoelectronics)と鴻海精密(HONG-HAI、Foxconn)傘下の群創光電(Innolux Display)が合併することが決定した。これまで業界トップだった友達光電(AU Optical Elctronics)は、これに対抗する連合を組織しようとしており、新たな業界再編の可能性もある。
また、深刻な経営状況が続くDRAM産業では、産業を救済するために業界再編の核として期待される台湾創新記憶体(TIMC)が政府主導で成立された。この新会社は日本のエルピーダメモリとの技術提携が予定された。しかし各方面の思惑が一致せず、立法院からも出資を反対され、業界再編事業は難航した。
■高雄ワールドゲームズ、台北デフリンピックが開催
7月に高雄ワールドゲームズ、9月に台北デフリンピックと、台湾は1年に2つの国際的な総合スポーツ大会を開催し、いずれも成功を収めた。
■新型インフルエンザが流行、35人が死亡
新型インフルエンザ(H1N1)の感染が台湾にも波及し、5月に感染者が発生して以来、年末までに35人が死亡した。入院は800人。台湾全土での新型インフルエンザによる学級閉鎖は一時、1日当たり3万人に上った。
国光生物科技(ADIMMUNE)が生産した台湾製のワクチンが、予防接種に供給された。しかし接種による健康被害が相次いで報告され、安全性に不安が広がった。